研究課題/領域番号 |
10440091
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
中村 新男 名古屋大学, 理工科学総合研究センター, 教授 (50159068)
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研究分担者 |
市田 正夫 名古屋大学, 理工科学総合研究センター, 助手 (30260590)
守友 浩 名古屋大学, 理工科学総合研究センター, 助教授 (00283466)
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キーワード | ペルブスカイト型酸化物 / 光誘起相転移 / 巨大磁気抵抗 / 二重交換系 / 電荷移動遷移 / スモールポーラロン / 超高速レーザー分光 |
研究概要 |
本年度は、ペルブスカイトマンガン酸化物の可視光領域の光スペクトルの測定から電子状態の同定を行うとともに、パルス光励起による磁性変化を調べた。具体的な成果は以下の通りである。 種々の温度における(NdSm)_<0.6>Sr_<0.4>MnO_3の吸収スペクトルを測定し、温度に依存しない成分はO_<2p>からMn3d(eg軌道)への電荷移動遷移遷移、温度に依存する成分は2つに分裂したegバンド間の遷移に起因することを示した。t_<2g>局在スピンとe_g電子スピン間に働くオンサイト交換相互作用(フント結合)のエネルギーJは一電子バンド幅Wより大きいので、e_gバンドはJだけ離れた2つのバンドに分裂する。このバンド間遷移のスペクトル強度は2つのバンドの状態密度の積1-(M/M_S)^2に比例することが期待され、実際、2.2〜4.OeVの領域のスペクトル強度は予想された依存性を示すことがわかった。 さらに、R_<0.6>Sr_<0.4>MnO_3(Rは3価の希土類金属イオン)のRを変えた薄膜試料を作製し、一電子バンド幅に依存したスペクトルの変化を調べた。e_gバンド遷移による吸収帯の幅から一電子バンド幅を求め、その平均イオン半径依存性を明らかにして、化学圧力効果を確認した。振動子強度がバンド幅の二乗に依存することから、対象にしたマンガン酸化物は理想的な二重交換系として振舞うことがわかった。 強磁性状態にあるマンガン酸化物におけるフォトドーピングによる局在スピン秩序の変化とスモールポーラロン形成過程について調べた。(Nd_<0.5>Sm_<0.5>)_<0.6>Sr_<0.4>MnO_3では、強磁性秩序状態にある局在スピンが遍歴電子の注入によってスピン反転し磁化が変化すること、およびそのピコ秒からナノ秒領域における動的挙動を明らかにしている。さらに、希土類元素を系統的に変えたマンガン酸化物の研究から、光によって過渡的なスモールポーラロンが形成されることを見いだした。
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