本研究は物質の動的な性質と機能発現との関係を明らかにすることを目的としている。このため光パルス列を物質に照射し誘導光散乱により物質中に、直接的にフォノンや緩和モードを大振幅に励起させ、その緩和過程を研究することにより、動的な構造と機能との関係を明らかにすることと、光パルス列で特定のモードを選択的に励起することによる積極的に物性を制御する方法を開発することを目的としている。 平成10年度は、Ti:サファイア再生増幅器内のパルスコンプレッサーやストレッチヤーなどの波長分散素子や共振器外の回折格子対でフーリエ変換波形整形法を行い、種々のパルス列を作り出す方法について研究した。その結果、増幅器内の波形整形では大きな波長分散を起こさせているため、10ps程度の時間領域でパルス列を作ることができ、特に、チャープさせた光を振幅変調することによって、数十psにわたる長いパルス列をつくることが可能であることが明らかになった。また、変調された光を増幅すると、増幅過程でパルスが整形され、きれいなパルス列になることが分かった。一方、共振器外の回折格子対で2つの波長を選択することにより、同期した2波長パルス作ることができ、これを用いた4光波混合の実験も行った。この場合には、波長の異なる2つの光パルスにより、物質中に動く回折格子が形成されるため、励起するモードの選択性があがることも分かった。
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