重い電子系URu_2Si_2のウランサイトを非磁性イオン、トリウムおよびイットリウム、ランタンで希釈した単結晶について高精度の磁気・熱測定(温度領域0.1K-300K)を行い、局所5f電子状態が以下の共通特性をもつことを明らかにした。(1)正方晶c軸に対する強い1軸磁気異方性、(2)局所反強磁性相関による低温磁化の抑制と比熱の増大、(3)低温エントロピーの小さな変化、(4)降温に伴う電気抵抗の減少。(4)に代表されるように、いずれの希釈系においても従来の近藤効果の兆候が見られないことを明らかにし、2チャンネル近藤理論および非クラマース2重項を結晶場基底状態とするアンダーソン模型から導かれる新しい局所多体電子相関の可能性を議論した。同時に、これらの理論が予想する絶対零度の残留エントロピーが観測されないことを磁場中比熱測定から明らかにし、理論には含まれていない電子-格子相互作用の重要性を指摘した。 周期系URu_2Si_2の微弱反強磁性状態がわずかな加圧によって著しく増強され、さらにある臨界圧で圧力誘起の新しい磁気相転移が起こることを圧力下中性子散乱実験により発見した。加圧に対する物理量の変化をもとに、過去に提案された種々理論の適用性をランダウの現象論を用いて議論し、非時間反転自由度による秩序機構が最も適することを指摘した。さらに上記希釈実験で得た単一ウランサイトの情報と圧力実験の結果に基づき、Uru_2Si_2の異常物性が非クラマースニ重項Γ_5の性質を用いて良く説明できることを指摘した。
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