現有の角度分解光電子分光装置に、マイクロ波励起新型放電管を取り付け調整することで、目標の分解能5meV以下を達成することに成功した。本装置を用いてfおよびd電子系強相関化合物について超高分解能光電子分光測定を行い、以下に示すいくつかの新しい知見を得た。 1.CeSbの磁気相転移に伴うフエルミ面形状の変化を初めて直接観測することに成功し、磁気相転移の機構が異方的p-f混成効果に基づくものであることを見出した。 2.CeRhSbおよびCeRhAsにおいて、フェルミ準位上に温度に伴い開閉する微小エネルギー擬ギャップを見出し、これらの物質がf-d軌道の混成の結果実現される「近藤半導体」であることを見出した。 3.UP_<t3>およびUR_<u2>S_<i2>の電子バンド構造およびフェルミ面構造を決定しバンド計算と比較した。その結果、pおよびd電子バンドは計算から予測されるものと比較的良い一致を示すのに対し、フェルミ準位近傍に位置するU5f電子軌道からなるバンドは、強い電子相関のため非常に狭くなっていることを見出した。 4.4f電子と5f電子の違いについて調べるために、複雑な磁気転移を示すUSbについて角度分解光電子分光測定を行いCeSbと比較した。その結果、USbは従来考えられていたような半金属ではなく、CeSbと異なって、U6d電子とU5f電子がフェルミ面を形成する金属であることを見出した。 5.Bi系高温超伝導体のアンダードープから最適ドープ領域試料のフェルミ面上において、超伝導転移点の上の温度においても、超伝導の前駆現象と考えられる「擬ギャップ」が開いていることを見出した。さらに、この「擬ギャップ」に2種類のエネルギースケールが存在することを見出した。 6.Bi系高温超伝導体について高運動量分解能光電子分光測定を行い、そのフェルミ面がX点を中心としたホール面であることを確定した。
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