研究概要 |
高温超伝導の発現機構に関する知見を得るために、高温超伝導体、および、その関連物質における電荷・スピン秩序の研究を行った。その成果を以下に記す。 1.La系高温超伝導体においてよく知られているCu当たりのホール濃度p=1/8における超伝導の異常な抑制、所謂1/8異常を、Znで部分置換したBi系高温超伝導体において発見した。さらに、Znで部分置換したBi系やY系高温超伝導体のp=1/8においては、低温でスピン相関が著しく発達することをミュオンスピン緩和の実験から明らかにした。したがって、1/8異常はCuO_2面を有する高温超伝導体に共通の性質であると結論した。 2.La_<2-x>Sr_xCu_<1-y>Zn_yO_4単結晶のx=0.21において、特異的に、超伝導が抑制され、低温でスピン相関が発達することを発見した。そのスピン相関は、1%のZn置換によって著しく発達し、中性子弾性散乱実験では、20K以下で、x=1/8で観測されているような(π,π)周りの非整合磁気ピークを観測した。したがって、x=0,21においても、x=1/8と同様に、電荷とスピンの動的なストライプ相関が静的に安定化する傾向にあり、1%置換されたZnによってピン止めされて、静的なストライプ秩序が形成されたものと思われる。 3.以上のことから、電荷とスピンの動的なストライプ相関(ストライプゆらぎ)はCuO_2面を有する高温超伝導体に共通に、超伝導が発現する広いホール濃度範囲で存在し、それが高温超伝導の発現に効いている可能性があると結論した。 4.スピン梯子格子系Sr_<14>Cu_<24>O_<41>において輸送特性を研究し、梯子格子面のホールは低温で電荷密度波というよりはホールペアを形成していると結論した。また、この系では、スピンによる熱伝導度が異常に大きいことを発見した。
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