研究概要 |
数多く発見された高温超伝導体の中で、La系物質、La_<2-x>SrxCuO_4(LSC)は発見の先駆けとなった物質である半面、臨界温度Tcが「異常に」低い物質でもある。その原因は、ストライプ秩序と呼ばれるスピン・電荷秩序のゆらぎである可能性が高い。本年度の研究では、ストライプ秩序が観測されるLa_<2-x-y>Nd_ySr_xCuO_4(LNSC)を対象に次のような実験を行った。 (1) 様々な組成(x,y)の単結晶試料の合成。(ii)中性子、高エネルギーx線散乱及びμSRによる秩序構造の詳細な検討。(iii)赤外及びマイクロ波分光そして電子輸送現象測定による秩序相での電荷ダイナミックスの研究。 上記の結果、ストライプ秩序相について得られた知見をまとめると。 1. スピン・電荷秩序からの中性子及びX線散乱を運動量空間全体にわたり探査した結果、秩序構造として、CuO_2面上で1次元的なストライプ構造であることがほぼ確認できた。また、面に垂直方向も、CuO_2面4枚で1周期となることがわかり、ストライプ構造モデルを支持することとなった。 2. ドーピング依存性に関しては、ストライプ秩序が形成されるのがLSCの超伝導組成域0.05<x<0.25に限られており、x=1/8でストライプ秩序が最も安定であるこがわかった。前者は、ストライプゆらぎが高温超伝導の発現に何らかのかかわりをもっていることを示唆している。 3. 秩序相の電荷ダイナミックスは、x=1/8を境に質的な変化をみせる。xが1/8より小さい場合、電荷がストライプ上を動くという1次元性を反映した特徴が光学伝導度や輸送係数に観測される。1/8を越えると1次元的な特徴は薄れ、2次元的な電荷ダイナミックスになる。 これから、ストライプ秩序がx=1/8で特異的に発生するものではなく超伝導相全域にわたって起こりうること、x=1/8を境にストライプ構造が質的に変化することが示された。
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