研究課題/領域番号 |
10440103
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
固体物性Ⅱ(磁性・金属・低温)
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
高木 英典 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 教授 (40187935)
|
研究分担者 |
野原 実 東京大学, 大学院・新領域科学研究科, 助教授 (70272531)
|
研究期間 (年度) |
1998 – 2000
|
キーワード | 強相関一次元金属 / 朝永-ラッテインジャー / 磁場誘起次元変化 / Y1248 / 結晶成長スピン液体 / 幾何学的フラストレーション / スピネル酸化物 |
研究概要 |
量子効果が顕著な低次元物質では、スピンが3次元秩序(固体化)を示さず、量子スピン液体と呼ばれる一種の液体状態を取ることがしばしばある。量子スピン液体状態に電荷や軌道などの自由度を絡ませると、超伝導を含む様々な量子凝縮相が出現すると考えられている。この認識のもと、本研究は、量子スピン液体状態が発現する典型的な舞台設定である一次元反強磁性鎖系を取り上げ、電荷導入(キャリアドーピング)によって誘起されるエキゾチック物性を積極的に開拓することを意図した。 1.1次元量子スピン液体にキャリアドープすると何が起こるのか?朝永ラッティンジャー液体と呼ばれるエキゾチック金属相は実現できないだろうか?不安定な状態に外的な刺激を加えることで、劇的な電子系の変化を起こすことはできないだろうか?金属的な1次元鎖を有する数少ない酸化物であるYBa2Cu4O8を主な舞台に選び、上記の問いに挑んだ。そのもっとも顕著な成果は、15T以上の磁場下で電子が1次元鎖内に閉じ込められ、鎖間を自由に動けなくなる現象-磁場誘起次元変化-を発見したことである。別の言葉で言いかえるならば、磁場制御によって、鎖間の伝導を金属から絶縁体へとスイッチングできることを示した。発見と同時に、Gorkov&Lebedモデルに基づくスイッチング機構-電子の実空間軌道振幅と鎖間距離の大小関係が現象を支配する-を提唱した。不純物効果を利用したモデルの実験的検証を行い、定量的なレベルで、モデルの妥当性を検証することに成功した。次のステップとして、ラッティンジャー液体の可能性なども念頭において、極低温での電子状態を調べる事を目指した。 銅酸素二次元面の超伝導がこれを阻んでいたので、YをPrに置き換えることにより超伝導を示さないPrBa2Cu4O8に舞台を移した。 (名古屋大学のご好意による)その結果Yの場合に匹敵する高い伝導度を有する金属鎖が実現していること、単純なフェルミ液体とは思えない異常なふるまい(鎖間伝導、磁気抵抗)が明らかとなった。 2.量子スピン液体にキャリアを注入する新しいアプローチとして、3次元フラストレーション系に注目し、研究を進めた。スピネル・パイロクロアなど正四面体のネットワークからなる構造のもとでは磁気秩序が抑制され、基底状態として量子スピン液体が期待される。一次元系と異なり、これらの系はキャリアを注入したとき、金属的な基底状態が得やすいという利点を有する。スピネル型LiV2O4が、まさにキャリアドープされた量子スピン液体状態にあること、さらにその舞台設定が遷移金属酸化物としてははじめての重い電子系状態形成へと導いていることを、周辺物質を含めた体系的な比熱、輸送現象測定から実験的に示した。また、圧力下で、金属-絶縁体転移を起こし、電荷秩序を起こすことを発見した。現在、構造解析を進めている。
|