研究概要 |
1今年度はこれまでに得られた成果の発表をブラジルで行われたInternational Conference on Magnetismで公表した。特に、TmX(X=S,Se,Te)において、最近の中性子実験によりこれまで3価と思われていたTmSは+2.9価の価数揺動状態にあることが指摘され、TmTeの2価の半導体、TmSeの2.75価の価数揺動状態に起因する異常な物性はTmの4f13レベルと5dの伝導帯との相対位置で決定されることが予想されていた。圧力を加えることでその相対位置つまり価数を連続的に変えていったときの磁性、輸送現象の結果を総合的に比較検討した結果、格子定数でTmX(X=S,Se,Te)全般にわたる磁気相図を統一的に見ることが出来ることを明らかにした。 2高圧下でTmTeの価数がどのように変化していくのかを定量的に見積もるため高圧下でのL_<III>吸収実験装置の立ち上げを行った。ガス駆動型ダイヤモンドアンビル装置とX線吸収解析装置とを組み合わせ、常圧では4.2K〜300Kまでダイヤモンドアンビルを通して測定画家能となり、TmTeについて、室温で10万気圧までの圧力範囲まで測定した。常圧で2.2価であったものが3万気圧付近から6万気圧にかけてかなりシャープに2.8価へと変化していき、その後圧力を増加させてもほぼ一定にとどまっていることがわかった。この結果によってTmの価数と異常な輸送現象、磁気相転移との関係が明らかとなった。これらの成果は第41回高圧討論会で公表した。
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