本研究は定常多重極限環境(超高圧・極低温・強磁場)発生装置を整備し、希土類価数揺動物賛に焦点を当てた新規物性現象の探索とその機構解明を行うことを目的とした。主な、定常多重極限環境発生装置の整備としては、先ず、キュービックアンビルを用いたX線回折と電気抵抗を同時に測定できる、7K<T<300Kの温度範囲、10GPaまでの高圧発生可能な、低温・超高圧発生装置を完成させた。次に、磁化測定のための静水圧力及び1軸圧力発生装置を量子干渉型磁束計(SQUID)とを組み合わせ、2K<T<300Kの温度範囲で、それぞれ、1GPa、0.5GPaまで測定可能とした。次いで、改良型ブリッジマンアンビルを用いて、温度範囲1.5K<T<300Kで8GPaの超高圧力下、20Tの強磁場下で輸送現象の測定を可能にした。さらに、ダイヤモンドアンビルを用いた低温・高圧用XAFS装置の開発を進めた。これらの装置を用いて、希土類元素、Ce、Pr、En、Sm、Tm、Yb、Luを含む種々の金属間化合物、合金の物性測定を行った。物質名は以下のとおりである。CeP、Ce_<0.9>La_<0.1>P、CeP_<0.9>N_<0.1>Ce_2Fe_<17>、CePtGa、Ce_3SnC、Ce_3PbC、Ce_3Pd_<20>Si_6、Ce_<0.5>La_<0.5>B_6、CeNi、CeSbNi_x、PrInAg_2、PrCu_2、EuNi_2(Ge_<1-x>Si_<1-x>)_2、SmS、TmTe、TmSe、YbAs、YbInCu_4、Yb_4As_3、Yb_4(As_<1-X>Sb_x)_3、Lu(Co_<1-x>Al_x)_2これらの物質はそれぞれ固有な新奇現象を示したが、なかでもCeP系では低温・超高圧下で見出された異常な輸送現象がCeの極めて特異な圧力と磁場に依存する磁気状態がその原因である事を明らかにした。さらに、TmTe系で低温・超高圧・強磁場下で見出された特異な輸送現象もTmの磁気状態が原因であり、Tmの価数揺動と密接に関係していることを明らかにした。
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