研究課題/領域番号 |
10440105
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
安岡 弘志 東京大学, 物性研究所, 教授 (50026027)
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研究分担者 |
上田 寛 東京大学, 物性研究所, 教授 (20127054)
生嶋 健司 日本学術振興会, 特別研究員
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キーワード | 核磁気共鳴法 / NMR / ウラン化合物 / 四重極秩序 / 反強磁性体 |
研究概要 |
本年度は、広い周波数領域に対応した高性能NMR分光器を般置し、それを用いて一次転移する反強磁性体(T_N=30.5K)UO_2のウランNMR実験を遂行した。UO_2の反強磁性転移は、磁気的秩序のみならず、四重極モーメント(あるいは軌道モーメント)の整列も伴っていると考えられている。^<235>Uを93%濃縮したUO_2の試料を用いて、温度1.5Kから15Kまでの反強磁性状態におけるウランNMRスペクトルの温度依存性を測定した。核四重極相互作用により7本に分裂したスペクトルの温度依存性はほとんどなく、一次転移後の低温では5f電子基底状態に変化が無いことを意味している。スペクトルの中心線と分裂幅から、5f電子がウラン核位置に作る内部磁場(253.2T)と核四重極相互作用の大きさをそれぞれ決定することができる。U^<4+>の自由イオンの波動関数を用いた解析から、その大きな内部磁場は5f電子の運動によって生じる軌道磁場がその主な起源であることが判明した。また、核四重極相互作用は5f電子の波動関数の対称性を直接反映しており、このスペクトルから元来UO_2の結晶構造から立方対称性のはずの波動関数が、磁気秩序に伴って一軸対称性の波動関数に変化していることがわかる。さらに、NMR法は核磁化の緩和率から、その電子系の低エネルギー励起に関する情報を得ることができる。本研究のUO_2に関しては、反強磁性状態の縦緩和率(1/T_1)の温度依存性から、強いマグノン-フォノン結合の存在を示唆している。これは、UO_2の一次転移が強いスピン-格子間相互作用の結果生じていることを支持する結果である。
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