研究概要 |
本年度は、軌道・価数制御された層状ペロブスカイト型マンガン酸化物を作成しその磁気伝導物性・磁気格子構造を系統的に研究した。磁気格子構造は、主に、原研改造3号炉の共同利用を通じて得られた。代表的な研究成果を列挙する。 (1) マンガンの価数が+3.4のもの Aサイトが(La,Sr)の組み合わせの場合、T_c=120K以下で強磁性金属に転移する。Aサイトの希土類金属またはアルカリ土類金属の平均イオン半径を系統的にかえ、格子構造・磁気構造に与える影響を調べた。得られた結果より、この系の磁気構造は軌道(d(x^2-y^2)とd(3z^2-γ^2))の安定性で決定されることが明らかになった。この研究成果は、現在、PRBに投稿中である。 (2) マンガンの価数が+3.3のもの Aサイトが(La,Sr)の組み合わせの場合、T_c=90K以下で強磁性金属に転移する。Laサイトを10%Ndに置換すると、反強磁性相に転移することが明らかとなった。この磁気構造は、丁度、天然のスピン・バルブ構造をしている。実際に、外部磁場の印加によるスピン・バルブの開閉が可能である。さらに、Ndの濃度を変えることにより、スピン・バルブ機能性(スイッチング磁場・磁気抵抗の大きさ)の最適化が可能であることを示した。これらの研究成果は、PRBに制裁された。
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