研究概要 |
希土類元素のEuの価数揺動は2価と3価の間で起こるが、その平均価数は温度や磁場に強く依存する。私たちはこれらの現象がICFモデルによってうまく説明されることを明らかにしてきたが、本研究ではICFモデルの適用限界を調べ、またその物理的原因を明らかにすることを目的としている。 本年度は代表的な価数転移を示す系であるEuNi_2(Ge_<1-x>Si_x)_2とEu(Pd_<1-y>Pt_y)_2Si_2の格子定数の温度依存性、前者の系の電気抵抗の温度依存性および高圧下での価数転移の振る舞いについて調べた。 格子定数の温度依存性からは、両系ともある臨界組成(x〜0.18,y〜0.05)を境にしてEu2価が安定な領域から価数転移が起こる領域になる。臨界組成に近いところでは低温で一次転移が起こり、遠くなると価数変化は連続的になることがわかった。これらの現象はすべてICFモデルで説明される。なお、両系とも同じ正方晶の構造を持つが、価数転移に伴いEuNi_2(Ge_<1-x>Si_2)_2では格子定数a、cとも大きな変化を示すのに対して、EU(Pd_<1-y>Pt_y)_2Si_2ではaのみが大きな変化を示すという違いが見られる。EuNi_2(Ge_<1-x>Si_x)_2の高圧下の実験ではEu2価が安定な組成でも価数転移を起こすことに成功した。この結果はSi置換が圧力と同等であることを示しており、Si1また電気抵抗の振る舞いでは価数転移に伴い電気抵抗の温度依存性にピークが現れるが、この現象は化合物をEu2価と3価の合金とみなし、その組成が温度とともに変化すると考えると不純物散乱の機構(合金におけるノルトハイムの法則)で説明されることを見出した。 なお、その他にフラックス法による結晶育成もはじめ、EUNi_2P_2で大型の単結晶を得ることに成功し、比熱、電気抵抗、ホール効果の測定を行った。その結果この化合物の電子比熱係数は90mJ/K^2molと、大きいことが明らかになった。
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