研究概要 |
本研究はEu化合物におけるEuの価数揺動と価数転移機構を解明するために行われている.今年度はまず試料の良質化について大きな進歩があった.すなわち,EuPd_2Si_2においては従来低温で磁化率の発散が見られ,これは試料の酸化による避けられない問題であると考えられてきたが,今回,900℃で焼鈍を行い室温まで炉冷することによって,この磁化率の発散が著しく抑えられることを見出した.さらに種々の実験から磁化率の発散が酸化によるものではなく,Pd/Siサイトのディスオーダーによるものであることを明らかにした.今回この良質の試料を用いて,Eu(Pd_<1-x>Pt_x)_2Si_2の比熱を測定し,価数転移に伴うエントロピーを評価した.またICFモデルを用いてエントロピー変化を考察した.その結果,ICFモデルではエントロピーのおおまかな温度変化や高温での絶対値をよく再現するものの,低温における温度変化については定性的にも説明ができないことを見出した.これはICFモデルが価数揺動の低エネルギー励起を正しく記述していないことを意味している. また,EuNI_2(Si_<0.85>Ge_<0.15>)_2について高圧・強磁場のもとでの磁化測定が行われた.この試料は常圧では2価安定の反強磁性体であるが,圧力かけると0.2GPaで3価安定の状態に転移する.それに強い磁場を加えることで再び2価を安定にすることに成功した.この結果は高圧と強磁場でこの系の価数を自由にコントロール出来ることを示している.その他EuNi_2P_2の電気抵抗の圧力効果や,Eu(Pd_<1-x>Pt_x)_2Si_2のメスバウアー効果等の実験も行い価数転移に関する知見を得た.
|