研究概要 |
本研究の最終目的は2次元有機導体α-(BEDT-TTF)_2MHg(SCN)_4(M=K,Tl,Rb)のサイクロトロン共鳴をキンク磁場H_K(M=K,Tl,Rbそれぞれで23T,27T,32T)以上の高磁場相で観測して有効質量を決定し、SDW相および高温相の有効質量を系統的に比較検討することによって各相のフェルミ面を決定し、ひいてはこの系の特異な相図の起源を明らかにすることにある。この目的にむけて2年目である本年度は,以下のように研究を実施し成果がえられた。 (1)クレーンを実験室に設置し,コンデンサーを地下に入れるとともに前年度納入された新しいコンデンサー充電用電源と結線をおこない,3kV,100kJでマグネットテストができるよう実験室を整備した。 (2)上記のコンデンサーバンクを使って50Tパルス磁場発生をめざす新しいCu-Ag線パルスマグネットの製作をおこない,テストした結果1700Vで36Tをえた。このマグネットは破壊されておらず,測定系に設置した。また,別仕様のCu-Ag線パルスマグネットでテストをおこない,2880Vで,42Tの磁場発生に成功した。したがって,最終目的を達成するための磁場が整備された。 (3)ガン発振器と現有の光源を用いてまずH_Kがもっと低いM=K塩について高磁場相におけるサイクロトロン共鳴の観測の予備的実験を続け信号をえたが,感度の向上をめざした改良を継続している。また同様の2次元有機導体でより単純なフェルミ面を持つθ-(BEDT-TTF)_2I_3のサイクロトロン共鳴の観測を定常磁場でもおこない,その有効質量を1.03m_0と2.14m_0であると確認した。
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