高圧力を用いた物性研究の利点は合金・元素置換効果とは異なり系を乱さないで物質の体積を連続的に変化させることができる点で、磁性、超伝導の分野ではその物性への圧力効果が大きいことから特に最近非常に高い関心が集められている。また、高い関心が集まっている理由としては最近の高圧下での測定技術の進歩に負うところが大きい。このような背景のもとで本研究ではより高い圧力領域での物性測定法を確立し低温高圧下での物性研究の圧力範囲を広げ、超伝導転移、絶縁体-金属転移、磁気転移などの新奇相転移現象の探索を高圧下で行うことを目的とした。高圧発生装置として高い圧力領域をターゲットとするためにダイヤモンドアンビル装置(DAC)を用いた。DACは非磁性の材料で構成され、低温でも圧力可変となるようにヘリウムガスで荷重を制御できるように設計した。圧力はDAC内に試料とともに封入したルビー粉末の蛍光波長のシフト量から決定した。そのための顕微分光装置の構築も行った。また、超伝導転移を検出するために交流帯磁率測定システムの構築を行った。より高い圧力を発生させるほど試料サイズを小さくせねばならず、物性測定も益々難しくなる。今回、圧力効果がよく調べられている典型的な超伝導物質である鉛の超伝導転移の圧力効果の測定を行い、なんとか信号を検出できる段階まで来た。また、実際に金属-絶縁体転移を示す酸化物の高圧下でのふるまいをDACよりも容積の大きなキュービックアンビルプレスで現在調べており、順次DACでさらに高い圧力まで調べる予定である。
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