平成12年度は、3年目で最終年度に当たるため、本研究の主要設備として導入したサンダコック型ファブリペロー干渉計の周辺機器の整備を行いギガヘルツ領域の緩和現象を調べるとともに、より高い周波数領域であるテラヘルツ領域のダイナミクスをラマン散乱分光法により調べた。また、これらとともに昨年度より続いている広帯域誘電分散測定の研究の取りまとめを行った。 テラヘルツ領域のダイナミクスとしてガラス研究における現在のトピックスの一つであるボソンピークを調べた。その起源を解明するために、フラジリティーをリチウムの添加量により連続的に変えることのできるリチウムホウ酸塩ガラスをとり上げた。広い組成範囲で振った試料について低振動数ラマン散乱の測定を行い、中距離相関、非調和性とフラジリティーの明らかな相関を見い出し非調和ポテンシャルモデルにより解析して、フラジリティーの起源を考察した。 ギガヘルツ領域を調べるブリルアン散乱測定系は、昨年度までは後方散乱で窒素温度までの測定のみであったが、平成12年度の改良により10Kまでの低温下で直角散乱も行えるように測定系を整備した。この測定系を用いて、現在はガラス転移温度以下における速い緩和現象をとらえるためにセントラルピークの測定をリチウムホウ酸塩ガラスについて行っている。 低い周波数帯はインピーダンスアナライザーと時間領域反射法を組み合わせた広帯域誘電分光測定(1mHz-10GHz)では、強い液体と弱い液体の中間に属する一価アルコールについてその複素誘電率を液体、過冷却液体状態からガラス状態に至る広い温度領域で調べ、アルコールの分子におけるアルキル基の長さと形状が遅いベータ緩和過程にどのように影響を及ぼすか、さらに水酸基がアルキル基のどの位置に付くかによって遅いベータ過程がどのように変わるかを調べ、遅いベータ過程の起源を考察した。
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