研究概要 |
平成10年度は、低い周波数帯はインピーダンスアナライザー〔1mHz-10MHz〕と高周波数は時間領域反射法〔1MHz-10GHz〕を組み合わせて複素誘電率を広帯域で測る広帯域透電分光〔1mHz-10GHz〕により水素結合系ガラス形成物質のアルコールについて液体,過冷却液体状態における誘電緩和を調べ、主緩和の広い温度領域における挙動が二つの過程からなるを明らかにした。 平成11年度は、昨年に引き続き広帯域誘電分光測定では、典型的なガラス形成液体として知られるアルコールについて液体、過冷却液体状態からガラス状態に至る広い温度領域で誘電分散を測定し、アルコールの分子におけるアルキル基の長さの変化が主緩和のみでなくどのように遅いベータ緩和過程に効いてくるかを様々な試料について系統的に調べた。また、テラヘルツ帯のダイナミクスとして細かく組成を振ったアルカリホウ酸塩ガラスのボソンピークを光散乱により調べ、そのピーク振動数の顕著な組成依存性を明らかにした.さらに、ボソンピークと剛性率との相関を明らかにしボソンピークの起源はナノサイズクラスターの横波共振モードと結論した。 平成12年度は、広帯域誘電分光測定では、強い液体と弱い液体の中間に属する一価アルコールについてその複素誘電率を液体、過冷却液体状態からガラス状態に至る広い温度領域で調べ、アルコールの分子におけるアルキル基の形状と水酸基がアルキル基のどの位置に付くかによって遅いベータ緩和過程にどのように影響を及ぼすかを調べ、遅いベータ過程の起源を考察した。また、アルカリホウ酸塩ガラスにおけるギガヘルツ帯の速い緩和過程とテラヘルツ帯のボソンピークの相関を調べ、3次の非調和ポテンシャルモデルにより説明した。さらに、フラジリティーと中距離相関、グリューナイゼン定数に明らかな相関を見い出しその起因を考察した。
|