研究概要 |
この研究では、(1)古地磁気データが主として伏角と偏角というパラメター(ガウス係数)に非線形に依存するために逆問題に発生する問題点を根本的に検討し、(2)データ数は少ないが線形データである古地磁気強度のみを用いたインバージョンで過去500万年間の平均磁場と変動範囲を推定し、さらに(3)3次元ダイナモシミュレーションの結果と古地磁気観測から得られている地球磁場の性質の比較から地球ダイナモの特性を考察した。 上記(1)、(2)についてはKono,Tanaka,and Tsunakawa(J.Geophys.Res.,105,No.B3,2000)に結果を発表した。解析の結果得られた平均の磁場は、現在の磁場よりも更に軸方向双極子磁場に近い。更に双極子については平均値の約1/3程度の大きな変動範囲が推定される。また(2、1)の項が大きなパワーを持つことが軸対称性からのずれとして得られた。 (3)についてはKono,Sakuraba,and Ishida(Proc.Roy.Soc.Lond.,印刷中、2000)に結果を発表した。古地磁気から知られる磁場とダイナモの磁場は、軸性双極子の卓越、コア表面での各次数のパワーが同程度であること、ガウス係数が相互に独立な正規分布に従う確率変数でよく表現できること、などの性質が共通することが明らかになった。一方、コアの表面での磁場は、ダイナモの磁場では磁束が極めてせまい範囲に集中するが、この性質は高次成分についての分解能のない現在の磁場には見られない。
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