研究概要 |
この研究では、まず古地磁気データが主として伏角と偏角という磁場のモデルパラメター(ガウス係数)に非線形に依存する形で与えられるための問題点を根本的に検討した。現在までにGubbins and KellyやJohnson and Constableによって過去500万年間の平均磁場のモデルが提出されているが、これらの研究ではデータ(I,D)の平均値がパラメターの平均値と対応することが暗黙のうちに仮定されている。しかし我々はテイラー展開法を用いることによって、データの平均値はパラメターの平均値ばかりでなく分散によっても変化することを示した。一方データの分散は2次までの近似ではパラメターの分散と線形に対応する。 つぎに、上に述べた非線形データの複雑さをさけるために過去500万年間の古地磁気強度データのみを用いたインバージョンを行った。強度データは磁化方向のデータと組み合わせてX,Y,Zの3成分に変換することができる。こうするとデータは線形となり、平均値と分散それぞれについて別々に逆問題を解くことができる。インバージョンの結果得られた平均磁場は、現在の磁場より更に軸方向双極子が強く、その他の項では(2,1)の項に大きなパワーがあることがわかった。一方分散の解析からは双極子項が平均値の約1/3程度の大きな変動範囲を持つことがわかったが他の項については、データが十分でないため有意な結果が得られなかった。 第三に、この研究期間中に我々は3次元ダイナモの計算コードを開発し、地球磁場の起源についての研究を進めていたが、そこで得られた結果を用いてダイナモモデルの示す永年変化がどのようなものであるかを解析した。その結果によると、ダイナモの磁場は軸性双極子が卓越している、コア表面で各次数の磁場のパワーが同程度になる、ガウス係数は正規分布に従う独立な確率変数として扱い得る、など古地磁気から得られた描像とよく似た性質を持つことが示された。一方、コアの表面の磁場のパターンは西向きに移動するものも東向きに移動するものもあるなど、短期間の観測では見つかっていない興味ある性質も見られた。
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