研究概要 |
1.干渉合成開口レーダー解析による地殻変動の解析にとって,最大の誤差要因となる水蒸気遅延について,それを気象庁領域客観解析データを取り除く手法の開発を進めた.開発手法の有効性を確認するために,海洋潮汐荷重による地表変位が大きいと見積もられている朝鮮半島について解析を進めており,次年度に評価が可能となる予定である. 2.マックスウェル粘弾性地球について,巨大地震によって励起される地殻変動の時間的推移を求めるために安定性解析を行なった.自己重力および圧縮性を考慮にいれた球対称モデルでは予想に反して,時間と共に指数関数的に成長するモードが存在することがわかった.その原因には密度/体積弾性率分布の重力的不安定性と,粘性流体極限での数理的不安定性という2種類の要因が関与していることがわかった. 3.海洋潮汐エネルギーの散逸を見積るには,潮汐と海底地形の相互作用による内部潮汐波の発生を定量的に把握することが不可欠である.本研究では,北太平洋での密度成層,陸岸・海底地形,潮汐流の空間分布を考慮した3次元の高解像数値実験を行い,励起される内部潮汐波エネルギーの空間分布を調べた.その結果,フィリピン海盆,東シナ海陸棚斜面,伊豆・小笠原海嶺,ハワイ海嶺などで発生する顕著な内部潮汐波エネルギーが初めて定量的に見積られた.これに対して,東部北太平洋では発生する内部潮汐波エネルギーが3オーダーも低くなることが示され,北太平洋における海洋潮汐エネルギーの散逸過程の著しい東西非対称性が明らかにされた.
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