高温高圧下の急冷実験および対射光X線回折その場観察実験により、かんらん石、輝石などのマントル鉱物およびマントルの化学組成として代表的なパイロライトを用いて、相転移の観察および相境界の精密決定をおこなった。 本年度は特に以下のような成果が得られている。 1) 放射光を用いた高温高圧X線回折技術の開発をおこない、特に独自の高圧セルを開発することにより、圧力25万気圧、温度2000℃程度の条件下でX線その場観察実験を可能にした。 2) Mg_2SiO_4オリビンのスピネルーポストスピネル相転移境界の精密決定をおこなった。この結果、相境界の傾き(dp/dt)は従来の急冷実験に基づく結果と調和的であるが、転移圧力については2万気圧以上低圧測にシフトすることが明らかになった。 3) MgSiO_3パイロキシンのイルメナイト-ペロフスカイト相転移境界の精密決定をおこなった。この結果、実験時間内の結晶成長等の理由により、安定相の確認がX線その場観察実験では困難であった。そこで急冷実験を併用することにより、この境界を十分な精度で決定することができた。結果はこの相転移の傾きはスピネルーポストスピネルのdp/dtとほとんど変わらないが、圧力は約0.5-1万気圧程低圧側であることがわかった。
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