本年度は以下のような研究をおこなうとともに、研究全体の総括および今後に向けての新たな予備的実験を開始した。 1)放射光X線を用いて透輝石が下部マントル最上部では2種類のペロフスカイトに分解することを初めて高温高圧X線その場観察により確認した。また、それぞれのMg、Ca相互固溶量が極めて限られていることを回収試料の分析で明らかにした。さらに、それぞれの非圧縮率の測定をおこなった。 2)これまでの実験結果を総括し、660km不連続面の成因について考察をおこなった。一つの可能性として、660km不連続面が従来考えられていたパイロライトマントル中のポストスピネル転移が原因ではなく、エクロジャイト的な海洋地殻物質とパイロライトとの化学組成境界であることを、相関係、密度関係、弾性波速度変化等のデータをもとに提案した。 3)焼結ダイヤモンドアンビルを用いた急冷実験および放射光X線その場観察実験技術の開発をおこなった。この結果40GPaを越える圧力の発生が可能になり、このような条件下でマントル中の重要な鉱物の一つであるMgAl2O4スピネルの相変化を約40GPa、1500℃の高温高圧条件のもとで明らかにした。
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