本研究では、成層圏オゾン破壊の進行を左右する主要因である成層圏エアロゾルについて、衛星データと気象データを組み合わせて解析を行い、その消長過程を輸送過程と共に明らかにすることを第一の目的としている。本研究では熱帯から極域までのエアロゾルを衛星データから解析するが、熱帯の気象データは観測点が少ないために十分な精度がないという問題がある。本研究では、この「データ空白域」を埋めるべく、インドネシアで行われたゾンデ観測のデータを解析し、衛星のエアロゾルデータとの比較・検討を行う。熱帯気象データの整備は本研究以外にも大いに活用されることが期待できる。 本年度は 1) 奈良女子大学で、SAGEII(Stratospheric Aerosol and Gas Experiment II)の過去約20年分のデータを解析し、4波長の消散係数の波長依存性の解析を行った。オングストローム係数を解析したところ、熱帯低緯度で大粒径粒子が多く存在し、高緯度・高高度では比較的小粒径粒子が多いこと、消散係数とオングストローム係数の間には、明らかな負相関があることがわかった。ミー散乱理論を元にシミュレーションを行った結果、蒸発・凝結が卓越する場合には、同様な負相関になることがわかった。 2) 神戸大学の研究グループが中心となり、1997年9-10月にインドネシアで気象観測を行った。観測は宇宙開発事業団などのプロジェクトと同時に行い、大気中微量成分の飛行機観測(東京大学他多数機関による)、エアロゾル粒径分布の気球観測(福岡大学の協力による)などの結果と比較できるようにデータベースを整備した。
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