研究概要 |
本研究では、成層圏オゾン破壊の進行を左右する主要因である成層圏エアロゾルについて、衛星データと気象データを組み合わせて解析を行い、その消長過程を輸送過程と共に明らかにすることを第一の目的としている。 本年度は 1)SAGEII(Stratospheric Aerosol and Gas Experiment II)の過去約20年分のデータを解析し、4波長の消散係数の波長依存性の解析を行った。オングストローム係数(消散係数の波長依存性を示すパラメータ。オングストローム係数が大きいほど小粒径粒子が多い)もあわせて解析した。消散係数とオングストローム係数の間には、明らかな負相関があり、時系列解析の結果、火山噴火後には急激な消散係数の増加が引き起こされるのに伴い、オングストローム係数が減少する事が明瞭になった。ミー散乱理論を元にシミュレーションを行った結果、蒸発・凝結が卓越する場合には、同様な負相関になることがわかった。さらに、バックグラウンドレベルの解析を行ったところ、1989年レベル(ピナツボ火山大噴火以前)ではまだそれ以前の火山噴火の影響が残っており、バックグラウンドとはいえないことがわかった。航空機からの排気ガスに伴うバックグラウンドレベルの長期的増加について議論があるが、我々の結果はそれを明確に否定した。 2)Improved Limb Atmospheric Spectrometer(ILAS)のデータを解析し、1997年冬季北極でPSCの発生を明らかにした。一方、Carslaw et al.[GRL,1995]のルーチンをもとに硫酸と水の2成分系で計算し解析した結果をもとに、衛星で観測されている消散係数をもとに大気中全硫酸量を推定することに成功した。これをもとに、北極では、硝酸・硫酸・水の3成分系でSupercooled Ternary Solutionの粒子が形成されていたことを示した。
|