地球極域から宇宙空間に拡散する酸素イオン(ポーラーウィンド)が太陽極端紫外光を共鳴散乱する事を利用して撮像を行うための光学系の研究に平成10年度から入った。この開発は世界に先駆けて行うものであり、成功すれば世界のトップに立つことが出来る。この際問題となるジオコロナ(ライマンα線)を除去するためのフィルター及び反射鏡の製作が開発の中心となった。 昨年度までは反射鏡の開発およびフィルターの開発を行った。反射鏡においては紫外線領域の物質の光学定数を用いた計算によりライマンα線の反射率を抑える為に最適と考えられる表面コーティングの組み合わせを選びだす作業を行った。これにより酸素撮像に最適な反射鏡を製作することが可能となった。またフィルターはInフィルターを酸化させずに使う技術を習得した。 本年度は、開発の集大成として、実際に開発してきたフィルター、反射鏡を組み合わせたロケット搭酸素イオン共鳴散乱光センサー(XUV)を製作した。これは宇宙科学研究所SS-520-2号ロケットに搭載され、平成12年にスバルバードから打ち上げられた。センサーは、水素ライマンα(121.6nm)線の十分に除去し、かつ酸素イオンの共鳴線(0 II 83.4nm)に感度を持つものである。高度800k以下では電離層(F層)中の酸素イオンからの発光をとらえている。また高度800kmより上空の観測結果から、電離圏酸素イオンの発光ではないと考えられる成分があり、これが極域電離圏からの流出酸素イオンの発光であると考えれる。この成功は、将来の磁気圏・惑星大気圏撮像への布石となる
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