本年度は、超微小硬度計で弾性定数(ヤング率)を測定できるかどうか、に重点を置いて調ベた。試料には石英、紅簾石、電気石を使用した。従来、ヤング率はドエルナー・ニックスの方法によって計測されている。本研究でもこの方法で計測を行ったが、加える加重が異なると、得られるヤング率が系統的に変化することがわかった。これの原因について検討した結果、荷重の大きさと試料にかかる圧力が関係しており、ヤング率の系統的な変化はその圧力依存性と関連していることがわかった。荷重が軽いと高い圧力画家仮、重いと低い圧力が試料中に生じていることがわかった。この結果は、一般通念とは逆の結果となってしまった。一回のテストでもこのことは明らかになった。つまり、押せば押すほど試料にかかる圧力は小さくなることが一連の負荷過程で確認された。圧力は荷重÷面積で計算するが、荷重の増加とともに、圧痕の大きさが大きくなる際に、圧痕の大きさの方が有効に大きくなり、荷重が増えた分を追い越してしまった結果である。圧力とヤング率は直線関係にあり、圧力が高くなるほどヤング率は高くなる。荷重を加える速度を三段階で変えてテストを行った。荷重負荷速度を遅くすると到達する圧力が小さくなってしまうが、圧力とヤング率の関係については影響が出ていないことがわかった。この方法で調べられる圧力範囲は5GPaから60GPaくらいまでである。この圧力は、地下150Kmから1800Km位までの圧力に相当するものである。この圧力でヤング率を測定する方法は未だ提案されていない状況で、この方法が果たす役割を認識した。
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