研究概要 |
1999年7月に中部地方の領家帯,9月に北上山地,11月に北上山地と阿武隈山地,12月に近畿地方の領家帯の各白亜紀花崗岩類の野外調査を行い,試料採取をした.2000年3月中旬にも阿武隈山地の補足的な調査・試料採集を行う.また,花崗岩類の典型的な冷却史を知る目的で,11月には宮崎県大崩山バソリスの調査を行い中新世花崗岩類の採取を行った.本年度採取した試料数は60試料におよんだ.採取した試料は研究室で岩石薄片を作成し,偏光顕微鏡下で観察を行い,変質の程度を調べた.これまでに採取した試料は全て新鮮な資料であり,年代測定に適したものと考えられる.各試料から約3kgを選び60メッシュ以下に粉砕したのち,重液法と磁選法により鉱物分離を行ったところ,フィッション・トラック年代の測定に適したアパタイトを90%の試料から,ジルコンを95%の試料から得ることができた.また,新鮮なカリ長石・黒雲母・角閃石を得ることができた試料もあり,K-Ar法か,Ar-Ar法でも年代を測定する用意ができた. 昨年度に採取した試料も含め,これまでに白亜紀花崗岩類について73試料からジルコンと66試料のアパタイトの分離を終了し,京都大学原子炉で熱中性子照射を行った.また,別途入手した中新世屋久島花崗岩体からの試料についてアパタイトとジルコンの中性子照射も終了した.年代測定を開始しており,これまでに中新世花崗岩類に関して,ジルコン12試料,アパタイト14試料の年代測定を終了した.アパタイトで約9Ma,ジルコンで約14Maの年代値を得ることができている.アパタイトの閉鎖温度はその中に含まれるフッ素と塩素の量比により異なるので,その測定も島根大学の協力を得て開始した.
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