研究概要 |
ウミユリ類の各種間の相同性と,系統を考慮するために,以下の作業,研究を行った. 1.石川県能登半島の能登島周辺に分布するAntedon serrata,Decametra tigrinaの幼生標本の観察を,現地の能登島水族館の幸塚久典氏の協力の下に進めている.今までに観察を終えたニッポンウミシダ(Oxycomantus japonicus)とはウミシダの中でもかなり異なる分類群に属するこれらのウミシダの発生・骨格成長は,肛門板の有無など,相同性を考える上で重要な標本で,今後走査電顕を用いた観察を行う予定である. 2.関節亜綱有柄ウミユリの最も古い産出である,宮城県本吉町に分布する下部三畳系平磯層産のHolocrinus sp.,およびドイツのゲッチンゲン産の中部三畳系のHolocrinus sp.を比較検討した.その結果,これらは関節亜綱の最大の科であるゴカクウミユリ科の基本的な体制(茎に節を持ち,節直下の関節で茎を自切する能力を有すること,従ってウミユリは底質に永久に固着するのではなく,茎を自切する事によって場所を変える能力を持っていたことなど)をすでに有していたことが明らかになった.また,古生代の最も近縁とされるAmpelocrinus類などの遊離類と比較しても,その形態は大きく異なっており,二畳紀末〜三畳紀初頭に有柄ウミユリ類には大きな形態変化が生じ,関節類が生まれたことが示唆される.
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