研究概要 |
横浜市栄区上郷に露出する更新世小柴層の外側陸棚相から産出する大型合弁二枚貝類を主体とした化学合成化石群集のボーリング調査を行った.ボーリングは下部密集層に層理面に平行な20mボーリングを一本,水平ボーリング地点から層理面に垂直な25mボーリングを一本,上部密集層と下部密集層を貫く層理面に垂直な40mボーリングを一本,および化石の水平方向の広がりを確認するための層理面に垂直な15mボーリングを一本実施した.その結果,以下の点が明らかになった. 1) 水平ボーリングの結果,化石密集層は水平的には広がらず,露頭の周囲だけに存在することが確認された. 2) 垂直ボーリングは,石灰質コンクリーションと大型二枚貝が層理面に垂直な方向に35m以上連続していることを示した.従って,調査露頭の化学合成化石群集は,地層の層理面に垂直に打込まれた杭のような形状を示すと思われ,湧水現象が長期に渡って継続していたことを示す.垂直方向の規模は,この群集が世界で最も層理面に垂直な方向に継続した群集であることを示す. 3) 垂直ボーリングの一部に貝殻が破砕された大型二枚貝が観察された.また,粗粒堆積物の基質が全て炭酸塩で構成されている層準が確認された.これらの現象は,一時的に非常に強い湧水がないと説明できない. 4) 北海道稚内沖の現生と考えられる大型二枚貝を含む石灰質団コンクリーションを調査したところ,深度50mから得られたサンプルにシロウリガイ類が多数含まれていることが確認された.この記録は世界で最も浅い場所から発見されたシロウリガイ類の記録である.
|