研究概要 |
本年度は,主に更新統小柴層の化学合成化石群集のボーリング試料4コアの解析,北海道稚内市沖の完新世化学合成群集の解析,および宮崎県の宮崎層群中の鮮新世の化学合成群集の化石を行った.これらの群集はいずれも陸棚相から産出する. 1)横浜市の更新統小柴層のコアを調査した結果,コアの岩相には凝灰質物質が卓越するのに対して周囲の露頭の同層準の露頭には凝灰質物質が相対的に少ないことが明らかとなった.この理由は,化学合成群集の生息場が周囲よりへこんでいたため,選択的に凝灰質物質などの粗粒堆積物が流入したためではないかと推定した.コア中のコンクリーションには,カルサイト,アラゴナイト,ドロマイトが存在することが判明し,これらの起源を炭素と酸素の安定同位体比から検討中である. 2)北海道稚内沖の水深60〜120mから採集されたシロウリガイ類やオウンガイ類を含む石灰質コンクリーションを調査し,基質の炭素と酸素の安定同位体比,および貝殻の炭素の放射性同位体年代を測定した.その結果,いずれの基質も非常に低い炭素の安定同位体比を示し,メタン湧水に依存した群集であることが明らかとなった.また,オウナガイ類は約1000年前,シロウリガイ類は約10000年前に生息していた個体であることが判明し,現在の陸棚にも湧水性化学合成群集が生息していたことが明らかとなった. 3)宮崎県の鮮新統高鍋層から陸棚域に生息する化学合成群集を発見し,その産状を調査した結果,この群集はツキガイモドキ類からなり,石灰質コンクリーション中に著しく密集して産出することが明らかとなった.
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