研究概要 |
炭酸塩岩は,その構成炭酸塩鉱物の化学的特性により,近地表環境において続成作用を大きく被る.したがって地球表層における環境変動,特に海水準変動や気候変動は,炭酸塩岩の堆積作用を規制するだけでなく,その続成作用も強く支配している.そのため浅海域に堆積した炭酸塩岩は,堆積直後から海水準変動に伴う種々の続成作用の影響を強く受けており,環境変動のよい記録物であると考えられる. そこで本研究では,炭酸塩続成作用の進行速度の定量化とそのメカニズムを明らかにすると共に,浅海成炭酸塩岩の堆積岩岩石学的観察,特に続成シーケンスや各続成ステージの生成物の同位体組成の変化等の検討を行うことにより,海水準変動や気候変動について明らかにすることを目的とした. 検討の結果,浅海成炭酸塩堆積物では,堆積以降のわずか数千年から数万年という期間で,鉱物組成,炭素・酸素同位体組成共に,堆積時の初生値とは異なった有意な変化として顕れることが明らかになり,また特に地表露出に伴う陸水性続成作用により,炭素・酸素同位体組成は大きく変動することが明らかになった.南大東島における海水準変動に伴う続成作用の検討では,大東層は,相対的な海水準変動の過程の中で2回のドロマイト化作用によりドロマイトが形成され,そのドロマイト化作用に関与した溶液は,海水,あるいは海水にわずかに淡水の混合した高塩分の混合水の可能性が推定された.さらに予察的に実施した陸域炭酸塩堆積物の検討では,鍾乳石を構成する方解石の炭素・酸素同位体組成には,水温などの環境変動を記録している可能性が指摘され,過去数千〜数万年程度の陸域における気候変動を数年オーダーで解明する手法として,有用であることが判明した.
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