火星隕石は、世界中で21個の隕石が存在していて、その全てが火成岩であり、4つのタイプに分類されている。このうち、シャーゴッタイト・タイプは、さらに、2つのサブタイプ(玄武岩質とレルゾライト質)に区分されている。しかしながら、玄武岩質サブタイプ以外の全ての火星隕石は沈積岩であり、その元のマグマ(親マグマ)の化学組成については不明である。特に沈積岩タイプの火星隕石の岩石学的研究を行い、火星隕石の互いの成因関係を明らかにする事を主要な目的とした。本研究では、特に沈積岩質の火星隕石中の主要鉱物(オリビンと輝石)に取り込まれている小さなマグマ包有物に着目して、その化学組成や鉱物組成を調べ、親マグマの化学組成を推定した。 本年度では、沈積岩タイプのレルゾライト質隕石であるYamato793605隕石」を用いて、そのオリビン中に存在するマグマ包有物を詳細に調べた。その包有物中には、角閃石の1種であるケルスータイトが含まれている事をまず確認した。然る後、ケルスータイトを含むマグマ包有物中の構成鉱物の化学組成をX線マイクロ・アナライザーを用いて化学分析を行った。これらの構成鉱物やガラスなどの化学組成などから、鉱物の安定領域や熱力学的考察を通じて、マグマ包有物の形成過程と生成条件を類推した。また、新しい火星隕石であるDaG735隕石の研究を開始した。この隕石は、玄武岩質シャーゴッタイト・タイプに属し、オリビンの斑晶を含んでいる。その斑晶の中に、マグマ包有物が存在しており、現在、鋭意研究中である。
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