大陸地殻下部物質の高温高圧下における弾性波速度測定

1998 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 10440151
• 研究機関: 横浜国立大学
• 研究代表者: 有馬 眞 横浜国立大学, 教育人間科学部, 教授 (10184293)
• 研究分担者: 石川 正弘 横浜国立大学, 教育人間科学部, 講師 (70232270)
• キーワード: 大陸下部地殻 / 地震波速度測定 / 高温高圧実験 / トーナル岩

研究概要

1。 高温高圧下における弾性波測定装置の立ち上げを行った。口径34mmのピストンシリンダー型高圧発生装置を用い、直径14mm長さ12mmの測定試料について、最大圧力10kb、最高温度450℃までの条件で弾性波の試験的測定に成功した。高圧セル内の温度分布の測定を行い、試料中心部と末端部で約5℃の温度差が確認された。さらに高温条件での測定にむけて、圧力素子の形状や高圧セルの形状について検討を行っている。
2。 伊豆弧中部地殻(丹沢深成岩)のP波伝播速度とS波伝播速度を常温常圧で測定した結果、ともに構成鉱物比に強く依存することが明らかになった。例えば、ハンレイ岩はVp=4.82-5.50,Vs=2.43-2.89km/s。石英ハンレイ岩はVp=4.74-5.12,Vs=2.43-2.57km/s。トーナル岩はVp=4.76-4.82,Vs=2.40-2.52km/s。さらに測定した弾性波速度データから、下部地殻圧力下(1.0GPa)での丹沢深成岩のP波伝播速度(Vp)を理論的に推定し、次のことが明らかになった。
(1) 伊豆小笠原弧の中部地殻のP波速度(6.0-6.7km/s)は石英ハンレイ岩とトーナル岩のP波伝播速度と一致する。
(2) 伊豆小笠原弧の下部地殻のP波速度(7.0-7.2km/s)は角閃石ハンレイ岩のP波速度(7.05-7.2km/s)で説明される。(伊豆小笠原弧の最下部地殻のP波速度(7.2-7.3km/s)は斜方輝石含有量が20%以上のハンレイ岩で説明される。

研究成果

• [文献書誌] Shaw,R.K.,and Arima,M.: "A corundum-quarts assemblage from Eastern Ghats Granulite Belt,Indio : evidence for high P.T metamorphism?" J.Metamorphic Geology. 16. 189-196 (1998)
• [文献書誌] Nakajima,K.,and Arima,M.: "Meltings experiments on hydrous low-K tholeiite : Inplica Toms for the genesis of tonalitic crustin the Izu-Bonin-Mariana arc." The Island Arc. 7. 359-373 (1998)
• [文献書誌] Kawate,S.,and Arima,M.: "Tanzawa plutonic complex,central Japan : Exposed felsic middle crust of Izu arc." The Island Arc.7. 342-358 (1998)
• [文献書誌] Gupta,A.K.,Kari R.,and Arima,M.: "Experimental studies on the system phlogopits-mangonese phlogapite at 1,10 and 20 Kbor and 750℃." J.Mineral.Petrol.Eco.Geol.,. 93. 129-137 (1998)
• [文献書誌] 石川正弘: "下部地殻構造とデラミネーション" 月刊地球. 21. 158-165 (1999)
• [文献書誌] Kitamura,K.and Ishikawa,M.: "Rock velocities at atomospheric pressure and room temperature in Tanzawa plutonic rocks from Contral Japan." In Origin and Evolution of Continent. (in press). (1998)
• [文献書誌] 有馬 眞: "岩波講座 地球惑星科学13 地球進化論,火成作用の変遷と大陸の進化" 岩波書店, 259-302 (1998)