研究概要 |
マントルと中心核の分離過程およびマントルの成層構造の起源を明らかにするためにペリドタイト、ペリドタイト+鉄の溶融実験を下部マントル条件下まで行った。ペリドタイトにおけるリキダス相は約31GPaまではマグネシオビュスタイト(Mw)であるが、これ以上の圧力ではペロフスカイト(Pv)に変わることが判明した。この結果は、深さ900km以上で生ずるマグマはペリドタイトよりSiO2成分に欠乏した組成を持つことを示しマグマオーシャン中での物質分化に大きな制約を与える。溶融鉄(MI)と溶融けい酸塩(SL)、Mw,Pvとの間のMn,Co,Niの分配を29GPaまで調べた。Mnの親石性、Co,Niの親鉄性が圧力とともに減少することが明らかになった。マントルと地球の資源物質に近い組成を有するとされるCI隕石のCo,Niの存在度を考慮すると、得られた分配データは深さ1500km以上のマグマオーシャンの中での中心核の分離を示唆する。 放射光(Spring-8)を用いて燒結ダイアモンド多数アンビル装置の圧力検定を行い、AuとMgOマーカーにより40GPaまでの発生を確認した。さらに,1500C以上の高温でも発生圧力は殆ど変わらないことが示され、多数アンビル装置で従来から問題にされてきた高温発生に伴う圧力の低下がほぼ克服された。このような技術的開発の上で、凍結不可能なSnO2の立方晶の相のその場観察を行った。その結果,25GPa以上で安定化するとされていたこの相が実は20GPa程度でも生ずることを明らかになり、体積弾性率と熱膨張率の測定が行われた。
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