研究概要 |
第三紀環境変動に関する地質学的・地球化学的データをまとめ,環境変動の特徴を明らかにした。特に,この環境変動に対する熱水・大成活動により脱ガスされる二酸化炭素の影響について考えた。第三紀はじめから現在にかけ,大きくみると気温は低下する。しかし,第三紀はじめおよび中期中新世に温暖化し,それ以降,急激に寒冷化した。第三紀はじめおよび中期中新世には島弧・背弧海盆での熱水・大成活動が盛んになったことによるCO_2の大気-海洋系への流入がこの温暖化の原因と考えられる。その後の寒冷化については,熱水・火成活動の衰退,海流の変化,ヒマラヤの隆起による風化の増大が原因と考えられている。以上の地質学的・地球化学的データからの定性的推定を裏付けるために,CO_2に関するグローバル循環シミュレーションを行っている。その結果,以上の考えを大まかに指示する結果が得られている。しかし,第四紀から現在にかけての寒冷化については,熱水・火成活動の影響では説明できない。これについては,南極氷床の発達によるアルベドの効果が主要因と考えられるが,今後も定量的考察を必要とする。環境変動の原因として,熱水・大成活動以外に,隆起・侵食,大陸面積,海流パターン,アルベド,生物活動などが考えられ,これらの複合的な相互作用により環境変動が決められる。今後は,これらの相互作用を考慮し,各時代における環境変動の主要因を地質学的・地球化学的データおよびコンピュータシミュレーションを組み合わせて明らかにしていく必要がある。
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