研究概要 |
本研究の目的は米国航空宇宙局ジョンソンスペースセンター(NASA/JSC)がスペースシャトルによって収集したミクロン径程度の微小な惑星間塵からそれに含まれる複数の鉱物種を同定し、得られる構造・組織・結晶性といった結晶学的情報を押出して、その惑星間塵の成因・履歴等を解明し、太陽系の物質進化論に資することである。2年間に行った装置関係の開発・新設及び得られた解析結果を以下に述べる。 1.2軸の微動ステージ上に搭載したガラスキャピラリーを既存装置へ組み込み、その光軸を調整して微小結晶に放射光X線を集光して入射し、微小結晶回折実験の効率向上を図った。 2.回折装置の検出器であるイメージングプレートの読み出し装置の空間分解能を向上させ、回折プロファイルから結晶性の評価を可能とした。これに伴い計算機の記憶容量を大型化し、プロファイル解析のプログラムを開発しCVDダイアモンドの評価を行った。 3.2種類の(Fe,Ni)系硫化物である惑星間塵の解析を行った。この系の硫化物は多くの地球圏外物質に含まれており、また生成条件を反映して多様な超構造をとることで知られている。微小な惑星間塵であるから放射光X線によって回折データを収集し、解析した結果、試料名L2005AE6はNA型磁硫鉄鉱であり、またL2005AG17は3C型磁硫鉄鉱と磁鉄鉱(微粉末状)の混合物であることが明らかにされた。両者共に天然からは初の発見であり新鉱物である。前者のNA型は超構造反射の数が少なく同期を決定したに止まったが、後者の3C型磁硫鉄鉱はこれまでの合成試料による解析例とはFeとSの含有率が異なるため新たに構造解析を行い構造模型を明らかにした。 これらの惑星間塵の解析結果を「国際鉱物学連合会議、カナダ、1998」、「アジア結晶学会、マレーシア、1998」及び「デンバー会議、米国、1999」において招待講演として発表した。
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