研究概要 |
本研究の目標は,岩石中の微小な気泡や液泡中での揮発性元素の挙動から,地震や火山活動などの巨視的な地学現象に伴って生じるガス放出の特徴的な性質をみいだすことである。地震予知,火山噴火予知という実用的な研究に貢献できるだけでなく,固体地球からの脱ガスによる大気形成過程の解明のための基礎データを提供できる。本研究で新たに、室内で岩石破壊に伴う放出ガスをリアルタイムで連続計測するシステムを製作した。このシステムにより、同時に最大12種類のガスの濃度を、最短で約1秒間隔で連続測定可能である。花崗岩試料を油圧プレスによって徐々に加圧していき、試料が破壊に至るまでに放出されるガス組成をリアルタイムで計測することに成功した。最終破壊時の加圧値の約40パーセントあたりから岩石中のマイクロクラックの形成および相互の連結が盛んになりはじめ、岩石の間隙を満たしていたガス(または流体)が試料外部に放出されはじめることがわかった。この実験で特に興味深いのは、最終破壊の直前の放出ガスの振る舞いである。それまでのガス放出パターンは、油圧プレスで加圧値を増した直後にステップ状に一時的に放出されて止まり、次の段階で再びステップに放出されるというもののくり返しであった。ところが、最終破壊の1ステップ前のときは、ガスの放出が連続的になり、最終破壊まで継続するという、それまでとは全く異なるパターンを示した。最終破壊直前の、この連続的なガス放出現象は、自発的なマイクロクラックの生成が起こったことを強く示唆している。破壊直前のこのような異常なガス放出は、地震前兆現象として報告されている種々の現象のメカニズム解明という観点からも、極めて興味深い。
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