研究概要 |
(1)堆積物中の有機物の続性過程における硫黄、セレンの挙動の解明 中国において乾燥地帯(河西回廊、黒河、石羊河)の河川水および河川堆積物、塩湖(青海省 青海湖)、温暖淡水湖(雲南省じ海)から湖水および堆積物を採取して、それらの中の有機物中の硫黄とセレンを、各種有機物分画ごとに定量した。また都市近郊河川である多摩川、その河口域、谷津干潟、運河(竪川、北十間川)からも試料を採取し、同様の分析を行った。この結果、人類活動の影響の少ない地域ではセレンは主に有機物に伴われて移動するが、硫黄は無機態、有機態のさまざまな化合物の形でより広い移動経路を持つことが明らかになった。また各堆積環境は固有の硫黄、セレン濃度分布関係を示すので、これから古堆積環境の推定が可能である。 (2)熱水環境における硫黄化合物の挙動 活動的火口湖におけるポリチオン酸の変動をインドネシアのKawah Ijen,Kawah Putih,Teraga Bodasで観測し、各々の火山の活動状況および活動のメカニズムの解析を行った。またニュージーランドのRuapehuにおける火口湖底下で進行している硫黄発散物(SO_2)の不均化反応に伴う同位体分別の解析を行った。また熱水環境のモニターの標準化を目的とした国際間分析コンテストを行い、問題点の抽出と改善への提言を行った。ラピス・ラズリを形成する熱水環境における硫黄化合物のキャラクタリゼーションは、紫外ラマン分光装置の感度不足のため、所期の目的を達成できなかった。また火口湖底の溶融硫黄中のポロニウムのモニターによる火山活動評価についてはICP-MSの感度不足のため、この研究期間内に達成できなかった。
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