本年度は、珪酸塩微小領域の酸素同位体比を測定するための、炭酸ガスレーザーを使った微量試料調整用真空ラインをくみたてを行った。本研究を遂行する上で重要なことは、この装置でいかにバックグラウンドを下げ、微量で精度よい測定をするかにかかっている。ここ10年来色々な実験が行われて分析方法が改良されてきたが、使用するレーザーは、炭酸ガスが珪酸塩には有効であることが分かり、また、25ワット以上の強力なレーザー光で、かなり短時間で分解する方法が同位体の分別を小さくすることができ再現性がよいことが知られていた。それ故、我々は40ワットの炭酸ガスレーザーを購入した。試薬と反応させる反応室は、表面積を小さくするために小さなヴォリュームのチャンバーを考えていたが、試料を大気とふれさせたり、反応室を大気に曝すことによるバックグランドの増加が大きな問題であることを考えて、試料反応室の前に前室をもうけ、そこで一度排気し、十分に試料の吸着水を除き、反応室に挿入できるようにした。これによって、反応室は、大気と一度も接触することなく試料の入れ替えをすることができ、大気中の水蒸気の反応室壁面への吸着を最小限とすることができる。この吸着水と試薬との反応がバックグラウンドになるため、バックグラウンドの減少が期待されるる。さらに、同位体比の累帯構造などを明らかにするための試料の分割装置は重要な技術である。幸い、1998年フランスで開かれたゴールドシュミット国際学会において、スイスの研究者の自作によるマイクロカッティングマシンが大変機能的に結晶の分割作業ができることが分かったので、この装置を購入することにした。
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