研究概要 |
本年度は、珪酸塩微小領域の酸素同位体比を測定するための、反応低バックグラウンドの試料反応装置と炭酸ガスレーザーを使った微量試料調整用真空ライン完成とそのテストを計画した。レーザーは40ワット定格の炭酸ガスレーザーを導入し、試料反応室の前室をもうけバックグラウンドを小さくした反応室を設計し真空装置を制作した。これによって、反応室は、大気と一度も接触することなく試料の入れ替えをすることができ、大気中の水蒸気の反応室壁面への吸着を最小限とすることができる予定である。さらに、同位体比の累帯構造などを明らかにするための試料の分割装置は昨年購入した、マイクロカッティングマシン装置のほか、高温変成帯の累帯構造の研究において、酸素の同位体と並び本研究の推進項目である炭酸塩と石墨の微細領域の試料採集のできる装置の購入とそれによる分解能のテストを行った。一方、南部インド地域と東ゴンドワナ地下深部の流体を含む変成過程についての大きな発展があった。南インド、マドレイ岩体の温度が、晶質石灰岩の方解石-石墨炭素同位体地質温度計の適用によりおよそ1,000度近くの超高温平衡温度が推定された。この結果から、この温度計が超高温度の変成作用に適していることが明瞭となった。また、同地域の詳細な石墨の同位体累帯構造から、一旦グラニュライト相相当の変成条件で平衡関係にあった炭素同位体比は、その後弊入した花崗岩岩体の近くにおいてのみ、同位体平衡が著しく乱され、弊入岩体に起源を持つ流体の多い変成環境が存在したことが明らかになった。これらは、特別奨励研究員との連携の研究の一部である。ゴンドワナ断片の一部である南極リュッツホルム湾の大理石試料でも、850度を示す高温変成作用が知られ、同時に微細試料の酸素同位体比の累帯組織から、変成最終期に地表起源の流体が深部近くに流入した証拠を示していることが明らかになった。
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