光化学ダイナミクスの電場効果に関する研究

1998 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 10440163
• 研究機関: 北海道大学
• 研究代表者: 太田 信廣 北海道大学, 電子科学研究所, 教授 (70113529)
• 研究分担者: 西村 賢宣 北海道大学, 大学院・工学研究科, 助手 (60218211) ; 山崎 巌 北海道大学, 大学院・工学研究科, 教授 (80002111)
• キーワード: 光誘起電子移動反応 / エキシマー形成反応 / 外部電場効果 / 光誘起プロトン移動反応

研究概要

分子間および分子内光誘起電子移動反応を示す電子供与体(カルバゾールやジメチルアニリン)と受容体(テレフタル酸とその誘導体およびピレン)および両者をメチレン鎖で連結させたものを種々の濃度で均一分散させたポリマー薄膜を作成し、膜の両端から電場を作用させ、発光スペクトルがどのように変化するかを調べた。その結果、光誘起電子移動反応が起こる系ではいずれも光励起された分子から発する蛍光の電場消光が観測され、電子移動速度自身が電場により増加することがわかった。またカルバゾールと種々の電子受容体の組み合わせにおいて観測されるエキサイプレックス蛍光に関しては、カルバゾールの濃度が高い場合には電子供与体の種類によらず電場消光が観測された。また電子受容体の濃度を高くしても、受容体の種類により生成するエキサイプレックス蛍光の電場消光が観測されるものとされないものがあることを見つけた。またエキサイプレックス蛍光の電場消光はいずれの場合も、光キャリアー生成に因るものであることを光電流の直接測定により明らかにすることができた。
ピレンとピレンをメチレン鎖で連結した化合物をポリマー中にドープさせ、蛍光の電場効果を調べ、ピレンの場合と比較した。その結果、メチレン鎖連結化合物ではエキシマー蛍光の電場消光はピレンの場合に比較してはるかに効率良く起こること、このことが有機EL発光の出現と密接に関係することを明らかにすることができた。
また光誘起プロトン移動反応も電場により影響を受けることをサリチル酸メチルを用いて確かめることができた。

研究成果

• [文献書誌] N.Ohta: "Electric-field-induced quenching of exciplex fluorescenes and photocurrent generation in a mixture of ethyl carbazole and dimethyl terephthalate doped in a PMMA polymer film" J.Phys.Chem. 102(19B). 3784-3790 (1998)
• [文献書誌] N.Ohta: "External electric field effect on photoinduced electron transfer from monomer and dimer of oxacarbocyanine in Langmuir-Blodgett films" Mol.Crys.Liq.Crys.,. 314. 119-124 (1998)
• [文献書誌] Y.Nishimura: "Electric field effects on the charge migration of methylene-linked carbazole and terephthalic acid methyl ester in PMMA polymer films" Mol.Crys.Liq.Crys.,. 315. 181-186 (1998)
• [文献書誌] N.Ohta: "External electric field effects on fluorescence of methylene-linked pyrene and N,N-dimethylaniline doped in a PMMA polymer film" Chem.Phys.Lett.,. 292. 535-541 (1998)
• [文献書誌] N.Ohta: "Relationship between surface morphology and electroabsorption spectrum of oxacyanine chromophore in a mixed Langmuir-Blodgett film" Langmuir,. 14. 6226-6230 (1998)
• [文献書誌] N.Ohta: "External electric field effects on fluorescence of a mixture of pyrene and C_<60> in PMMA polymer films and in thin solid films" J.Luminescence,. 79. 177-183 (1998)