研究課題/領域番号 |
10440167
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
西川 恵子 千葉大学, 大学院・自然科学研究科, 教授 (60080470)
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研究分担者 |
斎藤 健一 千葉大学, 大学院・自然科学研究科, 助手 (80302579)
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キーワード | 超臨界流体 / 超臨界水 / ゆらぎ / 相関距離 / 小角X線散乱 / 光散乱 / 熱伝導度 / 尾根線 |
研究概要 |
本申請者は、超臨界流体中のクラスター生成に伴う分子分布の不均一度に着目し、「密度ゆらぎ」(空間的分子分布の不均一度の定量的表現)と相関距離(分子分布の距離的表現)をX線回折法にて求めてきた。その結果、超臨界流体の状態は、「密度ゆらぎ」という物理量を用いて物質依存性なく普遍的に表されるという感触を得た。また、密度ゆらぎの等高線を相図上に描いた場合「尾根線」が存在し、尾根線が気液曲線の名残として超臨界状態領域を二つに分け、この尾根線上で溶解度の変化率が最大になり、反応の特異点もこの尾根上にあることを明かにした。今までの結果をふまえ超臨界流体の構造とゆらぎに主眼におき、以下の事柄を明らかにすることを目的としてこの研究を設定した。1)相図上での尾根線の正確な位置の決定、2)尾根線の物質依存性の検討、3)様々な物性量と尾根線との関係、4)静的・動的両面からの構造とゆらぎの理解。 1)に関しては、CO_2とCF_3HおよびC_2H_4で詳細な実験を行い尾根線が臨界等密度線からずれていることを示した。また、臨界定数で規格化したパラメータで表した相図上で、この3つの物質については、密度ゆらぎの等高線および尾根線は、実験の誤差範囲内で一致することが確かめられた。 2)に関しては、超臨界水の実験を行うため試料ホルダーを設計・製作した。超臨界水は、PCBやダイオキシンなどの難分解性物質の分解など、最近富みに注目を集めている。あまりの活性さと高温・高圧状態ゆえ実験は非常に困難であったが、チタン製の試料ホルダーを製作し、小角X線散乱実験に成功したところである。 3)に関しては、熱伝素子を利用して全く新しい原理・方法に基づく超臨界流体用熱伝導率測定装置を製作した。この装置では、今まで困難であった臨界点近傍の熱伝導度を精度良く、しかも簡便に測定できる。超臨界状態のCO_2とCF_3Hに適用し、熱伝導率がやはり尾根線上で極大をとることを確かめた。この装置は簡便に超臨界流体の物性を測定できるので、汎用化をめざし、種々の超臨界状態の試料に適用していく予定である。 4)の観点から光散乱の実験を試みる。動的・静的光散乱装置の立ち上げがほぼ終わり、超臨界流体用の光学セルの設計・製作を行っている。
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