本プロジェクトでは、飛行時間型質量分析計を装備した共鳴多光子イオン化分光法のための分子線用真空チェンバーを製作し、その装置および既存の分子線レーザー誘起蛍光分光用のチェンバーを用いて、主に以下の研究を行った。(1)ピコリン類、メチルピラジン、2-メチルキノリン等メチル基をもった含窒素芳香族化合物の単量体についてLIF励起スペクトルを測定し、メチル基ねじれ振動が観測されるかどうか、蛍光の量子収率とメチル基ねじれ振動の相関を検討した。(2)4-ジメチルアミノピリジンとその3-メチルおよび3、5-ジメチル誘導体の単量体について、LIF励起スペクトルを測定し、CT状態生成を中心に電子励起状態の緩和過程を検討した。(3)2-メチルベンゾチアゾール、5-メチルインドールなどメチル基をもった複素多環式芳香族分子の単量体および水、メタノール、N_2O、ベンゼン等との1:1会合体について、LIFおよびホールバーニング分光法を用いてS_1状態(最低励起一重項電子状態)におけるメチル基のねじれ振動を観測し、会合体形成によりそのポテンシャルがどのように変化するかを調べ、ダイナミックスとの関係を検討した。(4)m-トルニトリル・水、m-トルニトリル・N_2O会合体について、LIFおよびホールバーニング分光法を用いてS_1状態におけるメチル基のねじれ振動を観測し、会合体形成によりそのポテンシャルがどのように変化するかを調べ、ダイナミックスとの関係を検討した。また、すでに行われていたm-トルニトリル・希ガス(希ガス=Ne、Ar、Kr)の実験結果と比較した。(5)メロシアニン色素(NK1247)のLIF励起スペクトルの測定を試みた。観測された多くの低波数モードの起源を考察し、希ガス原子との会合体形成により低波数モードがどのように変化するかを調べた。
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