本年度は、ペニングイオン化躯程に関する速度選別立体オパシティ関数の測定を可能にするための測定システムを完成させると共に、高真空対応の反応チャンバーを新たに製作した。加えて予備的に、準安定アルゴン原子とCH_3Clの反応によりCH_3Cl^+を生成するペニングイオン化過程の速度選別立体オパシティ関数の測定を開始した。短パルス放電により生成した準安定アルゴン原子線(35μs)と六極不均一電場を用いた配向CH_3Cl分子線を交差させ、生成したCH_3Cl^+を配向電場の後方に設置した一対の二次電子増倍管を用いて検出する。各配向状態でのイオン検出効率の補正を行うため、ダイレクトビームでの生成イオン強度に対する、六極不均一電場印加時のイオン強度を測定する。また、バックグランド信号の寄与を取り除くため、測定は六極不均一電場印加電圧および配向分子線を変調しながら行われた。CH_3配向、Cl配向、側方配向の3つの配向状態での生成イオンの時間プロファイルをマルチチャンネルスケラーにより測定し、これから、速度選別立体オパシティ関数を決定した。得られたオパシティ関数は、関与するClに局在する分子軌道の空間分布と良い相関を示した。また反応断面積の速度依存性の結果は、負の傾きを示すことから準安定アルゴン原子とCH_3Cl分子の間には、引力性相互作用が働くことが分かる。また、その分子配向依存性は分子間ポテンシャルの異方性の存在を示している。
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