研究概要 |
光化学的に発生させた有機ケイ素活性種であるシリルラジカル(R3Si.)とフラーレン類の反応を検討した。求核的性質が予想されるシリルラジカルは、フラーレンへの付加が期待される。せいせいぶつとしてどの位置の付加体が得られるか、また、付加するシリルラジカルの数はいくつか、興味深い所である。三員環ジシリランとC60の光付加においては、1,2-及び1,4-付加の環状付加体が得られている。鎖状ジシランの場合、果たして付加位置は、1,2-、1,4-なのか、さらに1,6-等の付加が起こるのか未知である。生成物は、電子供与性のケイ素置換基を有するので、電子豊富なC60誘導体が得られると期待される。電子的構造に関して、レドックス電位の測定による実験的データと理論計算によるHOMO/LUMOエネルギーやフラーレン上の電荷密度との比較検討により明らかにした。さらに、アミノ基等の反応性置換基を有するジシランを用いた付加反応を試み、得られた付加体のケイ素上の置換基の分子変換により、種々の官能性誘導体の合成を行なった。具体的には、末端にカルボキシル基や水酸基を有するポリシラン鎖を導入することにより水溶性フラーレン誘導体、即ち水溶性ポリシランの合成やフラーレンを核としたポリシラン鎖のLB膜を試みた。また、ポリシラン類から生成するシリルラジカルを用いて、新しいフラーレンドープ型ポリシランの合成に着手し、得られたケイ素化フラーレンの予備的物性としての熱及び光導電性について検討した。 この反応系の興味深い点は、付加の位置、数や付加体の構造及びそれらの物性であり、これらに関する情報を得るために理論計算を行い、実験データとよい一致をみた。
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