研究概要 |
1. 2-アリール-2-クロロ-4,4-ジメチルペンタンのソルポリシスを12種類のベンゼン環置換基について行い,ハメット・ブラウン則を検討した。その結果,この系はクミル系とは異なり,溶媒の求核関与に対して背面が効果的に遮蔽されているが,ハメット・ブラウンプロットは良好な直線関係を示した。従って,従来のブラウンのσ^+値が溶媒の求核関与とは関係なく用いられることが示された。 2. 極度に混雑した非環状第三級塩化アルキルおよび1-ブロモ-3,5,7-トリイソプロピルアダマンタンのソルボリシスに対するGrunwald-Winsteinプロットを調べた結果,EtOH,MeOH,TFE,TFE-EtOHなどの非水溶媒系は直線を示すが,EtOH-水,MeOH-水などの含水系は下に凸の別々の曲線を与えることを見いだした。この結果は,アルキル置換基による疎水性効果のために,第一溶媒和圏のアルコールの割合が増大し,そのために低イオン化能雰囲気が作られるためと解釈される。混雑した第二級アルキルメシラート類についても同様な顕著な傾向が認められた。 3. 極性溶媒中で炭素一炭素シグマ結合がイオン解離する炭化水素を合成し,THF/DMSO中での解離を溶媒比を変えて測定した。その結果,DMSOの割合が5%程度までは解離度は急激に増大するが,それ以上の領域ではその増大は緩やかになることを見いだした。この混合溶媒系の誘電率は,DMSOが低濃度の場合に異常な変化を示すことはなく,ほぼ加成性が成立することから,DMSOとカチオン側の分子レベルでの特異的な溶媒和効果がイオン化を促進していることが結論された。
|