研究概要 |
前年度の研究で得られた新規錯体のデータをもとに,本年度はディスクリートな銅,マンガン,バナジウム等の集積型錯体の合成を行い,主として光照射による集積化や構造変化に関する研究を行った。二核マンガン錯体[Mn(Ph_2MeCCOO)(phen)_2]_2(PF_6)_2(1)に紫外線照射することで,混合原子化四核マンガン錯体[Mn_2(O)(Ph_2MeCCOO)_2(phen)_2]_2(PF_6)_2(2)が生成することを前年度の研究で見出したが,今回はphenにアミノ置換基を導入した配位子(L1)を用いることで,集積化反応に対する影響を調べた。配位子L1を用いた錯体3のメタノール溶液は暗所では全くスペクトル変化を示さないが,紫外線ランプによる紫外光を数時間照射することで溶液が淡黄色から濃褐色へと変化し,マンガン(III)に由来するd-d遷移が500nm付近に現れ,先の錯体1と同様のスペクトル変化を示すことがわかった。錯体の単離には至らなかったが,スペクトルパターンよりμ_3オキソ四核マンガン錯体であることが同定され,先と同様の光誘起による集積化反応が起きているものと推察された。またN-(2-ヒドロキシメチルフェニル)ベンジルアミンによる四核銅(II)錯体(置換基無:[CuL1-H]_4(4),-CH_3:[CuL1-Me]_4(5),-Cl:[CuL1-Cl]_4(6))は,メタノール溶液中における光照射により,2級アミン部位のイミンへの酸化が促進され,配位構造の再配列を促し[CuL2-H]_4(7),[CuL2-Me]_4(8),[CuL2-Cl]_4(9)へとそれぞれ変化することが見出された。それぞれの錯体の構造はX線結晶構造解析による同定され,配位子中のアミン性窒素およびイミン性窒素の柔軟性に応じて無理のない配位構造をとっていることが確かめられた。
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