研究概要 |
1.水に対する溶解度が低い1,10-フェナントリン(phen)あるいは2,2'-ビピリジン(bpy)が、エチレンジアミン1,10-フェナントロリンパラジウム(II)酢酸塩、[Pd(en)(phen)](Ac)_2などの水溶液には易溶であることが見いだされ前年度の実績報告に記述した。同様の現象が、4,7-フェナントロリン、4,4'-ビピリジン、2-ナフトールについても観測されたが、1,1'-ビ-2-ナフトール、ナフタレン、フェナントレン、アントラセン、C_<60>などでは観測されなかったことから、この現象を生じるためには、化合物は複数の芳香環を持つと同時に最低限の極性基を持ち水に微溶であること、分子構造は平面であるか回転により平面状態を容易にとれることが必要であることが分かった。 2.前年度、[Pd(en)(phen)](Ac)_2あるいは[Pt(en)(phen)](Ac)_2の水溶液にphenを溶解させた水溶液についてX線回折測定を行い、溶液内に錯体とphen分子が積層した構造をもつ超分子が形成されていることを明らかにした。本年度は、[Pd(en)(phen)](Ac)_2錯体の水溶液にphenあるいはbpyを溶解させ、溶液温度を0℃から90℃の間で変化し、イメージングプレート検出器を用いた微量試料迅速X線回折装置により測定を行った。その結果、温度の低下に伴い超分子形成が促進されること、phenの場合に比べbpyの超分子形成能は相対的に低いことが明らかとなった。 3.錯体水溶液の温度変化測定に必要な純水についての構造情報を得るため、-15℃から95℃の範囲で水の温度を変化させ迅速X線回折装置を用いてX線回折測定を行った。その結果、0℃以下の過冷却状態で水の構造が著しく強まるのが観測された。
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