研究概要 |
1.X線回折測定と電気伝導度測定から、[Pt(en)(phen)]^<2+>あるいは[Pd(en)(phen)]^<2+>錯体、と1-ナフタレン酢酸イオン(1-NAc^-)の間に強いイオン会合が起こることが明らかにされた。 2.上記錯体が存在すると、1,10-フェナントロリン(phen)、2,2'-ビピリジン(bpy)などの水に対する溶解度が著しく増大する現象が見出された。 3.phenを溶解した[M(en)(phen)]^<2+>錯体水溶液のX線回折測定を行った結果、動径分布関数に、錯体とphen分子の芳香環のスタッキングによる積層構造をもつ超分子形成を示す3.5Å間隔の周期構造が出現した。この超分子形成は、温度低下に伴い強まること、bpyよりphenの方が形成能が大きいこと、phenおよびbpyの溶解度増大の原因であることが明らかにされた。 4.[M(phen)_3]^<3+>および[M(bpy)_3]^<3+>のナフタレンスルホン酸(1-NS^-あるいは2-NS^-)塩の水溶液が、特定の組成範囲で希薄溶液相と濃厚溶液相の2液相に分離する現象が見出された。その相図は、フェノール-水系と類似し、臨界共溶温度(T_c)が存在し、T_c以上で2相分離現象は消滅した。T_cは、phen錯体の方がbpy錯体よりも高く、また、1-NS^-塩の方が2-NS^-塩よりも若干高くなったが、中心金属による違いは小さかった。 5.[Rh(bpy)_3](1-NS)_3および[Cr(bpy)_3](1-NS)_3の濃厚水溶液のX線回折測定の結果、溶液中で錯体が集合しており、1-NS^-の芳香環の一部が錯体の配位子間の疎水性空隙に侵入していること、その構造は温度により余り変化しないことが分かった。水濃度が高くなり2相分離直前になると、小角領域に向かって散乱強度が増大したことから、水の局在化を示唆する密度ゆらぎが増大し相分離に繋がるものと推測された。
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