生体系に匹敵する優れた認識機能を発揮する合成レセプターの開発は、種々の生命現象を分子レベルから理解するために重要であるとともに、生理活性物質の精密分離系や高感度センシング系を構築するためにも不可欠であり、基礎・応用両面から大きな意義をもっている。 本研究では、「希土類錯体」がもつ配位化学の特徴に注目して、キラル生体基質の認識に有効な『ハイブリッド型希土類錯体』の開発を目指して、1)カチオン結合能をもつ「クラウンエーテル環」を導入した『ハイブリッド型希土類錯体』を合成し、両性アミノ酸の抽出とキラリティー・センシング機能を飛躍的に向上させ、2)多彩な配位子を組み合わせたポルフィリン希土類錯体を系統的に合成し、希土類錯体の構造と不斉センシング機能との相関関係を明らかにするとともに、3)希土類(トリス-β-ジケトナート)錯体の構造最適化を図り、アミノアルコールに対して優れた基質特異性とキラリティー・センシング機能を実現することに成功を収めた。これらの研究成果は、生命科学や生命工学の分野で重要性を増している生理活性物質を高度に認識できるレセプターの開発に、新しい視点を与えるものとして興味深い。
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